この記事は、コア ウェブ バイタル(Core Web Vitals)の最適化をやるべきか迷ってる企業や人に向けた記事です。やった方がいいのか迷ってる場合は参考にしてみて下さい。
またこの記事はコア ウェブ バイタルのやり方や測定/改善方法について書いたものではありません。各論は他の方の記事に譲ります。
まず結論
コア ウェブ バイタルをやるべきかどうかは「費用対効果次第」と言う事ですね。
1.企業サイトのコア ウェブ バイタル
企業はコア ウェブ バイタルの改善をやった方が良い場合が結構あります。例えば
- ニュース媒体
- ECサイト
- ウェブツール
- 会員サイト
- 大規模サイト
とかですね。例えばニュース媒体は、パフォーマンスのちょっとした改善でもサイト全体で結構馬鹿にならないリターンになったりするからです。またECサイトなら売上に直結しやすいからです。あとは自社サイトのパフォーマンス改善がMBOなどで義務付けられてる担当者とかですかね。
それ以外の企業や人は見積もりを取ってから検討がベストだと思います。
コア ウェブ バイタル対応の費用感
自前でなければ数十万~100万円単位とかに達するケースもあります。これはサイトの目的や組み方などでピンキリの見積もりになりえます。
その費用に対してそれだけの利益を上げたり、KPIの改善を出来るか?と言った費用対の観点で見るべきかと思います。見合わないなら「やらない」と言う決断も大いにありです。
ちなみに私のコンサル先でも売上に寄与すると思われる画像やJSを大量に削除しないといけない…と言った事から、費用が見合わなくて断念するケースもいくつかありました。
2.個人サイトのコア ウェブ バイタル
そもそも制作開発の知見がある人、パフォーマンス改善を個人でも実装できる人などはやっても良いかと思います。ですが個人なら無料ブログやWordpress、ShopifyなどのCMSをどうしても使いますよね。プラグインとかアプリだって多少は入れざるを得ないので身軽とは言えなくなります。でしたら多分コードいじれない方にとってはCWVのスコア改善は完璧には出来ないかと思います。
更に大抵の方はサイトの規模だって大きくはないと思います。そうなるとパフォーマンスの改善をやる意味が費用に対してそこまで見いだせないケースも出てきます。そう言う場合は後回しでいいんじゃないでしょうか。前述の通り、費用感で言えば数十万とか行くときありますからね。
コア ウェブ バイタルはSEOに多分そんなに影響しない
どうなるかまだ分かりませんが、過度に恐れなくて良いかと思います。今の見立てでは軽微な影響に留まる可能性が高いと思われます。
と言うのも、サイトを
- コンテンツ
- インフラ
の2つに大別した時、コア ウェブ バイタルは2のインフラに対する評価軸なんですね。だけどGoogleのアルゴリズムではコンテンツを評価する傾向が圧倒的に強いのです。Googleも公式ブログで「コンテンツの方が重要である」と言っています。だからCWVの優先度はやや重要ではあるものの、それより下がると見ています。
少し補足すると、相対評価の検索アルゴリズムなので、検索競合と比べて大幅に悪い数値が出ていなければ一旦はOKと見て良いかと思います。あとは2021年6月以降の検索ランキングの動向をしばらく見て、と言う感じですね。
参考までに…以下は、とある超が付くビッグキーワードの検索上位のウェブバイタル結果です。
現状では「対策してるっぽい」サイトはほぼ無さそうですね(実際は分かりません)。2位の数値が凄いのはほぼテキストオンリーだから。JSもCSSも少なく元から軽いのです。サーバーはVirtual Machinesっぽいですが。
さてこれが、2021年の6月以降、ランキング指標にコア ウェブ バイタルが用いられて大幅に変動するか?と言うと、まあ無いでしょう。だってこれより下位のページもほとんどこんな感じなんですよ。
これはただのn=1のサンプルに過ぎませんが、ある意味今のGoogle検索結果の縮図みたいな典型例です。広くならすとどのクエリもだいたいこんな感じである事が多いんですね。もちろん例外も多数ありますが。
WordPress各テーマとか諸々CMSも含めて対応できている所が多くないので、これらを更に大きく下回らなければ一旦は良いと言うのが見解です(Shopifyとか”うちのパフォーマンスいいよ”と言ってますが、スコアは20~30点台とかザラです。でもそれはそれで良い場合が多いかと思います)。
コア ウェブ バイタルを簡単におさらい
コア ウェブ バイタルは「ユーザーのための優れたページ体験」についてとてもよく調査され、考え抜かれた指標で構成されてます。簡単に言えばロード時間を短縮し、インタラクティブ性をスムーズにし、レイアウト崩れをなくそう、と言うもの。これは本来やれて当たり前と言えば当たり前です。
でも、コア ウェブ バイタルって、様々な幅広いサイトを想定して、そこに統一的な指標を持ち込んだものです。だからちょっと強引なんですよ。当てはまらないサイトとか、どうしてもCWVに合わせた改善が無理なサイトが一定数発生してしまうのです。
そのためコア ウェブ バイタルを「どうやるか」の前にまず「やるかやらないか」「やるならどれをやるか」の意思決定が必要です。
コア ウェブ バイタルの3つの指標を見てみましょう。
1.LCP(Largest Contentful Paint)
このLCPと言う指標ではメインコンテンツの表示速度を測ります。サーバを高速なプランに変えるだけでもだいぶ変わります。でもそれだけでは限界があります。
例えば不要なJavaScript、CSSを削除するのはまだしも、画像や動画がメインコンテンツとなっていると厳しい場合があります。かつその数が多いほどスコアの高得点は厳しくなりがちです。
LCPは大体どんなサイトでも最初に見た方が良い指標です。
更にLCPがユーザー行動に大きく相関しやすいサイトで言えば
- 規模が大きいサイト
- ページネーション等でPVが多い(あるいはKPIとなっている)サイト
- 重厚長大なリッチコンテンツを多数抱えるサイト
などですね。どうしても少しの遅延が、積み重ねでは大きなPVの減少などに繋がりかねないですからね。
なおページの目的が売上やリード獲得である場合には、LCPは「そこそこ」で良いかと思います。
私の個人的なサイト群やコンサル先でも散々検証していますが、平均以下の数値を出すもの以外はあまり影響しないんですよ。あまり影響しないと言うと語弊があるかな。LCPやFCP(First Contentful Paint)を頑張っても、結局セールスコピーやコンテンツの方が強力に影響してくるんですよね。
2.FID(First Input Delay)
この指標はインタラクティブ性、つまりユーザーのアクションに対する反応速度などを評価するものです。考えられる対象としては
- コメント機能などのコミュニケーションを繰り返すもの
- ウェブ上で使うツール
- 何かの販売ページ など
と様々あります。これらがコンテンツの一部で、かつ重要なKPIに関わるならFIDは対策すべきですね。特に売上に直結する販売ページとかリード申込に影響するページであれば、その数値に影響する可能性があります。
一方で「読む行動だけで終わる」の様な記事型のコンテンツなどはそもそもここは悪い数値は出ない事が多いと思います。
3.CLS(Cumulative Layout Shift)
この指標はレイアウトが急に変わる(シフト)のがどれだけ累積してしまうか、を図ります。
典型的なケースを挙げておくと、画像を多用しているページで良く起きがちですよね。
画像のロードがちょっと遅れていて、記事を読んでる間に画像のロードが次々となされていき、その都度レイアウトが「がくん」と急に移動し、「あれ、急に読んでる位置が変わったぞ?今どこだ?」と読み手に思わせてしまうようなやつですね。
経験した事ある人は多いと思いますし、非常に厄介ですよね。これは言わずもがな改善すべきです。マジで数字的に離脱に影響するからです。
CWV3指標まとめ
以上コア ウェブ バイタル3つの指標を簡単に解説しました。他にもウェブパフォーマンスを測定する指標は多数ありますが、この記事ではコア ウェブ バイタルの3つのみを扱います。
さてこの3指標を見て分かる通り、コア ウェブ バイタルはユーザー体験を測定するものではありません。あくまでユーザー体験に影響しうる3指標を定義したものです。つまりインフラの性能を図るためのもの。
ユーザー体験が向上したかどうかを図るなら本来は他に図るべき指標があるはずです。
売り上げや申込数、PV、直帰率、滞在時間、ブックマーク数、果てはヒートマップに見られるアテンションやスクロール、クリックなどです。コア ウェブ バイタルの効果測定は必ずこれらユーザー行動や売上などの改善に相関したかどうかまで確認しましょう。
※多分そこを指標化しようとすると、計測時に重くなって本末転倒になるとか、コントローラブルだから自作自演可能だとか、そう言う諸問題があったんだと思います。
コア ウェブ バイタルについてはちょっと手段と目的が混同されてしまいそうな気運も感じています。CWVを改善する事が目的になってしまう様な。理想論、べき論も今多いですよね。長い目で見た時にCWVは今のSEOの様に、一部は形骸化する可能性もあるなと危惧しております。
コア ウェブ バイタル計測のためのツール
大抵の場合、自サイトの調査であればGoogle Search Consoleで十分です。また競合調査ならPageSpeed Insightsのラボデータ、フィールドデータを参考にするので十分かと思います。以下、それで物足りない人向けにいくつか3rdパーティのツールを挙げてみます。
- DareBoost
- dotcom-tools(dotcom-monitor)
- Google Chrome DevTools(デベロッパーツール)
- GTmetrix
- Lighthouse(Chrome拡張)
- Page Load Speed Analyzer
- Pingdom Speed Test
- RapidSpike
- Sematext
- Site 24×7
- SpeedCurve
- Uptrends
- WebPageTest
- Website Speed Test(画像分析)
- Yellow Lab Tools
コア ウェブ バイタルについての所感
コア ウェブ バイタルの指標を見るに、軽くてインタラクティブでレイアウトが安定している—とくればGoogleは明らかにSNSを競合として意識している可能性は高いです。可処分時間の奪い合いを一番しているのが各種SNSですからね。SNSと戦えるコンテンツを皆作ってくれよ、と言ってる様に見えます。
例えばShopifyを使う商店の競合ってFacebookショップとかInstagramショッピングとかSNSのコマースにまで拡大してるいます。ひと昔前ならニュースなんかもSNSにトラフィックを奪われましたよね。だからある意味、コア ウェブ バイタルってSNSに勝つ最低限の手段の1つとして我々に提示された側面もあるよなぁと思います。
また一方ではGoogleのコアウェブバイタルに関する情報公開の姿勢を見てると
「大事ではあるけど全ての人がやらなくとも良い。だって専門知識いるし、検索アルゴリズムでも最優先では全くないから」
みたいな態度に見えます。技術的な話にちょっと寄りすぎてますし、対象はアーリーアダプターぐらいか、もしくは制作開発が分かる人限定でしょうね。