D2Cブランドの集客にSEOって必要なの?と言う声がありそうですが、ブランドをまるごとメディア化する事の多いD2C事業においてSEOは実はとても相性が良いのです。
加えて、後述しますが、SEOはSNSが稼働していない時もハウスリストを構築してくれるため、上手くいけばCAC(またはCPA)をかなり抑える事が出来ます。
私(大木 @ossan_mini)はこれまで5社ほどのD2C事業者のSEOを手掛けて来ており、その経験からD2CにおいてSEOがどの様に不足していたか、そこをどう対策したかについて書いて見ます。
SEOについて
ご存じかとは思いますが一応、検索エンジン最適=Search Engine Optimizaionを指します。主にGoogle検索経由でのアクセスをより多く獲得しようと言うものですね。
D2CでありがちなSEOの失敗
まずご認識頂きたいのは、D2Cにおいて必要なSEOは巷に溢れるSEOとは少し違うと言う事です。ブランドの世界観を重視するD2Cにおいて、SEOで最もキャッチしたいのは「ブランド名」や「商品名」で検索する人です。
一方でD2Cに多いSEO上の失敗第1位は「ブランド名の検索でヒットしない事」なのです。つまりとても初歩的な部分でつまづいてしまっていると言う事なのですね。
具体的には
・ブランド名
・商品名
・店名
・経営者名
・スタッフ名
などの固有名詞。加えて、これらの「○○名+α」と言ったもの。例えば「商品名 使い方」などです。
ブランドの知名度が上がって来るとこれらは馬鹿になりません。知人のD2C企業で月に数千件検索されるブランドがありますが、SEO対策を行っていないため数か月間も検索にヒットしなかった事がありました。
ちなみにそのブランドの販売サイトに行くにはどうするかと言うと…
まず
1.そのオーナーのインスタグラムアカウントを探し出し
2.プロフィール欄に記載されたコーポレートサイトへ遷移し
3.そこから販売サイトへのリンクを見つける
と言う3行程を踏まなければならなかったのです(他に導線が無い)。心当たりのある人は要注意です。
この過程で恐らく大半のユーザーが離脱します。大いなる機会損失だと言う事なのです。
なぜD2CにSEOが必要なのか
それはSEOでも上記の様なSEOによる損失をカバーするだけでなく、
「新規客を獲得し自社ハウスリストを増やす」
と言うサイクルをつくる事ができ、集客の効率を上げるからです。言い換えると、D2C界隈で良く指標として用いられる顧客獲得コスト(CACないしはCPA)の低下をSEOが助けてくれると言う事。
※CAC=Customer Acquisition Cost
※CPA=Cost Per Action
特にSNSはフロー型で情報がどんどん流れていき、鮮度が重要になります。一方SEOは鮮度では無くストック型のため、例えSNSの更新をしていない間でも集客に寄与する事があります。すなわちSNSだけでなく、SEOとの両輪で集客に利用できれば顧客獲得効率がとても良いのです。
D2CのSEOは2段階
D2CのSEOは次の2段階があります。
1.ブランド名の検索流入を増やすこと
2.指名検索以外での検索流入を増やす
です。順に説明していきます。
1.ブランド名の検索流入を増やす
D2CブランドのSEOではまずここを最優先に取り組みましょう。
例えばD2Cブランドなら「Warby Parker」なら米国だけで月間約80万件の検索回数を誇ります。ここ日本においては例えば「バルクオム」が月間約18,000回、「BULK HOMME」が月間約6,600回と、合計で月間約25,000回ほど検索されています(Ubersuggest調べ)。
これらは有名なブランドの話ですが、SNSでそこそこ知名度が上がって来たばかりのD2Cブランドであっても月間で数百とか、1,000回程度は検索される様になります。月間これだけの数の人が探しに来てくれているのに、全ての人があなたのブランドを見つけられずに離脱する…と言う事を考えただけでぞっとするのではないでしょうか。
それだけならまだしも、例えばいち早くあなたのブランド名で批判記事を書かれたりした場合、ブランドのSEOが出来ていないと批判記事だけを読んで離脱する検索ユーザーが日に日に増えていく事になるのです。他にもあるのですが、これぐらいにしておきます。
すなわちD2CブランドのSEOの肝はこれらの検索ユーザーを確実にキャッチし、しなくて良い損失を徹底して防ぐことにあります。
1-1.まずtitleだけはきちんと入れよう
これに対する具体的な対策としては、サイトの全ページのtitleに必ずブランド名を入れて下さい。また商品ページでは商品名を入れましょう。例えばブランド名が「D2Cスキンケア」だとすると、
トップページのtitle:
D2Cスキンケア | (サイトのコピーフレーズ)
辺りが理想的です。
また個別商品の「D2Cマスカラ」があったとすると
当該商品販売ページのtitle:
D2Cマスカラ | D2Cスキンケア
と、商品名+サイト名の様なシンプルな構成が理想です。余計な要素を排除する引き算がSEOでは肝要です。
1-2.「同姓同名の別人」が多数いる問題
もう1つよくあるD2Cブランドの指名検索上の良くある問題を挙げておきます。
要するにブランドや商品名と似た名前の何かが既に存在していると、検索されてもあなたのブランドや商品はヒットしづらいと言うものですね。
例えばD2Cブランドで有名なマットレスの「キャスパー(Casper)」は米国では月間約20万件検索されています。
ですがこれで検索する人は同名の映画の『キャスパー』や同名の教育サービスの『キャスパー』など同音異義語を調べたい検索意図を多分に持っている可能性が高いのです。D2Cブランドのキャスパーも立ち上げ直後から当面は「検索されても自社サイトが検索上位にヒットしない」問題があったのは間違いないでしょう。
1-3.ブランド名を連呼する
そしてなるべく、あなたのブランド名や商品名を、SNS等で情報発信する際に印象付ける事です。
SNSアカウント名に「山田太郎 / 「D2Cスキンケア」運営」などと入れたり、投稿時にブランド名や商品名を省略せずに何度もフォロワーに刷り込む(言い方は良くないけど)事が重要です。
指名検索が増える過程ではこう言った地道な工夫が必要になります。
1-4.ウェブ上の全てのアカウントを相互に繋ぐ
文字通り、全てのSNSとウェブサイトを相互にリンクで繋ぎましょう。これはユーザーの利便性の為でもありますし、同時にSEOにも影響します。
Instagramなどプロフ欄に1件しかURLを置けないSNSもありますのでその場合はLinktreeなどのサービスを使い全てのサイトとアカウントを一覧でまとめると良いです。
ちなみに複数SNSをきちんと運用し、こうして相互に全てのアカウントでリンクし合うと、ブランド名の検索結果にあなたのブランドのサイトやアカウントが並ぶ事になります。ここまで来ればブランド名検索における機会損失はほぼ無くなります。
1-5.Google My Businessにも登録を
ついでですので、Google My Businessにもあなたの会社を登録しておきましょう。
店舗を持っていればGoogleマップ検索時にあなたのサイトがヒットしやすくなります。店舗を持っていなくても、
・企業名
・ブランド名
・住所
・電話番号
・営業時間
・ブランドの画像
等を入れておくと良いです。Googleにとって「きちんと実在する運営者」である事が伝わりやすくなり、間接的にSEOにおいて有利になりやすいのです。
2.指名検索以外での検索流入を増やす
D2Cブランドにおいて上記の1.が出来ていれば大方合格点ではあります。そこは既に出来ている、と言う場合は更にその次を目指すと良いでしょう。この先は巷に良くあるSEO論とほとんど同じです。
先述の通り、D2Cブランドはブランドそれ自体をメディア化させる傾向があります。その際にその他の細かいキーワードで検索流入を拡大させる事は有効です。
実はGoogleはブランド力があったり、著名だったり、権威性のあるサイトを優先的に検索上位に押し上げる傾向を強めています。無名だったり運営者を名乗らない数多くのサイトに対し、D2Cブランドは得てしてブランド力は高まるものなので、SEOではそもそも有利な場合が多いのです。
2-1.自社ブランドの顧客が知りたいであろう記事を書く
例えばあなたのブランドがスーツケースのブランドなら旅行についての記事を増やすのが最も良いでしょう。スキンケアのブランドなら肌の悩みに答える記事、と言った考え方を元にメディアを作っていくと良いです。
2-2.ジャーナリストかマニアになれ
例えばブランドのファンがSNSで、新しく日本に上陸する海外ブランドを話題にしていたとします。でもそれはあなたのブランドの競合でもある。こう言う時、そんなのは禁じ手であるとしてスルーを決め込むのも当然ありです。多くのブランドはそうするでしょう。
しかし逆張りの発想として、「ファンの知りたい事を何でも発信する」方針を貫くのもまたありです。この場合、そのブランドの1号店オープン時に取材に行ったり、オープニングイベントに参加しレポート記事を書くと言うものです。
また他にもブランドのファンが日々話題にしているネタにとにかくアンテナを張り、自分が率先して購入したり参加して感想をレポートする。と言った、ジャーナリストやマニアとしてメディアを定義してしまうのもお勧めです。
私(大木 @ossan_mini)自身が自分の個人的なお店のメディアで良くやっているのですが、そうした記事もかなり検索されます。同時にブランドのファンに常に思い出して貰えるきっかけになります。広告やPR業界の用語で言えば「純粋想起」や「第一想起」が喚起されると言うものです。
SEOではこれ以上に細かいテクニックが山ほどありますが、D2Cブランドとしてまずはこの辺りをきちんと出来ていれば上出来です。
D2CブランドのSEO効果検証と指標
これに関しては1つ入れておいて欲しい無料ツールがあります。それがグーグル サーチ コンソール(Google Search Console)です。これで見るべき指標の例としては以下の通り。
・指名検索数
・指名検索の順位
・指名検索のクリック率(CTR)
・その他重要キーワードの検索順位
・その他重要キーワードのクリック率(CTR)
などです。
繰り返しの説明になりますが、ブランドの世界観を独自メディアなどを通じて展開していくD2Cにおいて、指名検索数の伸びや、その検索結果で何番目を取れているかなどは最重要指標です。きちんとSEOをやっていれば1位はすぐに取れる事が多いです。
これらの指標はGoogle Search Console独自のものですので、Shopifyなどのアナリティクス(「ストア分析」機能など)でも見る事は出来ません。
D2CブランドのSEOまとめ
D2Cでは主にSNSを使いますし、時にはPR施策を、時には紙媒体の発行や店舗展開などを行いますよね。SEOは多くのD2Cブランドにおいておざなりになる事がほとんど。
だからこそ、D2Cブランドの集客においてSEOをやれる事は強みであり、冒頭に示した通りCACやCPAと言った重要指標において大きな助けとなりやすいのです。
ぜひこの記事に書いてあるSEOを実践して、あなたのブランドを多くの人に見つけて貰いましょう。
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